パスタは素手で食べるストリートフード。19世紀のナポリでは当たり前だった光景
様々な種類があるパスタの中でもマカロニは、17世紀から19世紀にかけてストリートフードとして庶民に親しまれた食べ物でした。
当時は今のようにフォークで食べるのではなく、素手でつかんで食べるのが一般的でした。
手でそのまま食べる慣習が珍しかったのか、当時ナポリへ旅行に出かける人たちは「素手でパスタを食べる人々」を見に行くのが一つの観光目的でもあったようです。ガイドブックやポストカードにはナポリを表すシンボルとしてマカロニを食べる人の絵が描かれていました。
また、素手によるマカロニの大食い競争が賞金付きで行われたりもしたそうです。当時はその攻略本も発売されていたようで「休むことなく両手を使って口にパスタを運び続けるべし」などの説明もあったとか。
パスタは12世紀にアラブ商人によってシチリア島にもたらされました。その後、300年かけてナポリへと広まっていったそうです。
今のように日常的な食べ物ではなくて、特別な日に食べる特別な食事という傾向がありました。
17世紀になると、肉や野菜の価格が上昇する一方で、パンやパスタの価格が下落していきました。同時にパスタを製造する機械が普及し、これまで以上に低コストでパスタの生産が行えるようになったため庶民の間でもマカロニが広く食べられるようになりました。
特に海に面して気候の良かったナポリはパスタ生産に向いていたこともあって、パスタを食べる人が激増。
ナポリの貧困層は空腹を満たして程よいカロリーをもたらしてくれるパスタに頼って生活していたようです。
ゲーテが1787年にナポリを訪れたとき、こう記しました。
「どこに行ってもほとんどのお店で少しのお金で買うことができる」
18世紀には街中のあちこちにパスタのお店が立ち並びました。パスタを乾燥させるために野外で物干しざおのような棒にぶら下げられる光景がいたるところで見られました。
当時のパスタ調理法は至ってシンプル。炭火で沸騰させたお湯で茹でるだけ。鍋の水には豚の脂と少しの塩で味がつけられていたようですが、19世紀にトマトソースが広まるまでは硬いチーズが唯一の調味料だったそうです。
20世紀になってナポリのパスタ生産は陰りを見せ始めます。
イタリア全土の食料自給率を上げるため、ムッソリーニがパスタの原料となるデュラム小麦の生産力を南から中心部、そして北部へと移動させていったためと言われています。
やがてパスタはストリートフードではなく、屋内のレストランへと移り変わり、手で食べる習慣はすたれて人々はフォークで食べるようになりました。
参照元・出典:
Eating Spaghetti by the Fistful Was Once a Neapolitan Street Spectacle / Atlas Obscura
最新情報をお届けします
Twitter でせかいろをフォローしよう!
Follow @sekairocom